
Drive to discover beauty
アヴァンギャルドとフレンチラグジュアリーを掲げるDSブランドのミドルサイズを担うDS 4。「世界で最も美しいクルマ」とも称されるDS 4であれば退屈な日常からの脱出は容易だ。60年余りの歴史を高尾山麓で刻む「うかい鳥山」を訪ね、フランスと日本、その前衛とアートに触れてみた。
文・馬弓良輔 写真・奥村純一
シトロエンDSの現代的解釈
日々の暮らしに少しだけ退屈を感じた時、クルマは最適な脱出手段だ。郊外まで少し足を延ばし季節折々の風の匂いを感じるだけで、ずいぶんと気分は良くなる。潮風を楽しみたければ横浜横須賀道路を飛ばして葉山あたり、木々の香りに触れたければ中央高速で高尾周辺だろうか。都内から1時間も走れば、退屈な日常とは違う空間と時間が待っている。
今回紹介する「DS 4」はそんな“非日常への扉”を開けてくれるクルマだ。2009年にシトロエンの高級サブブランドとしてスタートした「DS」は2014年に独立し、現在はステランティス・グループのプレミアムブランドとなった。もちろん、その名前の由来は1955年のパリサロンに突如降臨したシトロエンDSだ。宇宙船を思わせる前衛的かつ流麗なデザインと、油圧と空気で構成するハイドロニューマチックの独創のメカニズム。すべてが衝撃的だったシトロエンDSの、アヴァンギャルドとフレンチラグジュアリーの現代的な解釈がDSブランドのフィロソフィーである。
2022年※に登場した二代目DS 4もその精神を見事に体現している。クーペSUVとトラディショナルなコンパクトハッチバックの融合を目指したDS 4は「第37回国際自動車フェスティバル」で「Most Beautiful Car of the Year」を受賞するなどデザインの評価が高い。シャープでエッジの効いた外観は一貫して前衛的で、特に斜め後方から見た佇まいが秀逸だ。内装に目を転じても、その造形のユニークさもさることながら、トリムの随所に配された“Clous de Paris”のギヨシェ彫りやパールステッチを使う“フレンチ・クラフト”が強い印象を与える。前衛とアートが織りなすそのデザイン性ゆえ、空調の吹き出し口やパワーウインドウスイッチなどを初見で判別するのは困難だが、実はあるべきところにちゃんとある。(※2021年本国発表、2022年日本発売)
DS 4は走りも独特だ。PHEVモデルは8ATと一体化されたアイシン製1モータハイブリッドシステムを採用し電動感の強い加速を披露する。そして最大の魅力は乗り心地だ。特に揺れの収め方、ゆったりした乗り心地のリズムが素晴らしい。DS4に乗っていると道路がうねっていればいるほど好ましいと思う。目的地までの距離が刻一刻と減っていくことが少々残念にすら感じる。

今回紹介したDS 4以外にも、DSにはコンパクトSUV「DS 3」、アッパーミドルサイズSUV「DS 7」、フラッグシップセダン「DS 9」がラインアップされている。2026年初頭にはブランド初となるEVのフラッグシップSUV「DS N°8」も日本に導入、またDS 4のマイナーチェンジモデル「DS N°4」も本国では発表されている(日本導入時期は未定)。
1964年に開業したいろり炭火焼料理の「うかい鳥山」は、都内と神奈川県にとうふ懐石や鉄板焼など14店舗、海外にも2店舗を展開する「うかい」の創業本店。東京都八王子市南浅川町3426
https://www.ukai.co.jp/toriyama/
合掌造りとDS4に通じるもの
今回は“非日常の扉”の先を高尾山の麓にある「うかい鳥山」に定めた。この夏の酷暑の時期、さすがの高尾でも気温は30度を優に超えていたが、渓流から渡ってくる風は心地よい。いろり炭火焼料理と並んでうかい鳥山を象徴するのは世界遺産・五箇山から移築した合掌造り。岐阜県と富山県の山間部、白山麓の庄川沿いのみで見られる合掌造りは、豪雪に抗う急傾斜の茅葺き切妻屋根と屋根裏の養蚕スペースのための妻の開口部が特徴だ。白川郷と五箇山では出入口の配置が異なり、破風の形状も四角い白川郷に対して、五箇山のそれは丸みを帯びているなど細かい差異はあるものの、いずれにしても豪雪と養蚕のための設計は極めて合理的というか合目的である。それゆえ合掌造りは伝統的な日本家屋において究極の進化系、つまり前衛的だと言われている。
1964年の開業から60年以上を経た「うかい鳥山」の広大な敷地には合掌造り以外にも美しい日本家屋が点在し、よく手入れされた庭園がそれらを取り囲んでいる。建物の中にはテーブルの深みのある漆塗りの艶、囲炉裏の灰形、照明の竹編みなど、伝統的な職人技、アートを感じさせるものが多い。この空間に魅せられた多くのリピーターがいるというのも納得だ。
DS 4と合掌造り、現在の前衛と過去の前衛。どちらも細部に宿ったアートがあり退屈な日常から抜け出す刺激に満ち溢れていた。DS 4の穏やかな揺れに身を委ねながら走り出せば、非日常への扉はきっと開かれる。

DS 4
DS4のボディサイズは全長4415×全幅1830×全高1495mm。パワートレインは1.6L 4気筒ガソリンターボ+電動モーターのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)と、定評ある1.5L 4気筒ディーゼルターボの2種類が設定されている。“サヴォアフェール”を体現するナッパレザーシートを装備する最上級モデル「DS4Champs-Élysées」もラインナップ。価格は543万円 (税込)~。 撮影車「DS4 RIVOLI E-TENSE」は697万6000円 (税込)
https://www.dsautomobiles.jp/
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