「オープンカーに乗って、自分をさらけ出せ!」テリー伊藤

超クルマ好き、テリー伊藤、「人生いちどは、乗りたいクルマ」を考える。「人生最後の一台? そんなシケた考えはしないね」─。笑いながらそう語るのは、TVプロデューサーであり大のクルマ好き、テリー伊藤さん。「人生いちどは、乗りたいクルマ」を尋ねると、返ってきたのは意外な答えだった。

写真・柳田由人

高級料理より、食べ慣れた味がいい

オレ、昔からVWビートルが好きなんですよ。今も2台持ってるし、「これからあと2台くらい買おう」と思ってる。フラット4のエンジンの音がたまらないんだよね。オレ、クルマはすぐ売っちゃうんです。で、また買うから、「人生最後の一台はこれ」なんていうシケた考えはないの。まだまだ新しいクルマに出会いたいしね。

クルマ好きなら自分の“原点”みたいなクルマってあるよね。オレにとってはビートル。たとえば洋服で言えば革ジャン。青春時代に好きだったモノって、歳をとっても変わらないんだよ。もちろん高級車も悪くはないけど、フランス料理を毎日食べられるわけでもないでしょ。やっぱり食べ慣れた味がいいんだ。

オレは500万円以上のクルマには興味がなくて、人とちょっと違っていて、それでいてそこまで高くないクルマを選ぶのが好きなんだ。最近だと、ルノーのアヴァンタイムとかシトロエンC6とか、よかったね。だって2000万のクルマを買ったらずっと大事にしなきゃならないでしょ。オレはいろんなクルマに乗りたいから。浮気性なんです(笑)。

お医者さんに勧めるとしたら、いちどはオープンカーに乗ってみたらいいんじゃない? ちょっと前にミニのカブリオレに乗っていたけど、中古なら100万円台だよ。軽オープンカー、ホンダ・ビートも傑作だったな。発売されてすぐ買って、長く乗ってた。ちょっとマジメだけど、今だったらマツダ・ロードスターもいいね。

もしお金があるんだったら、フェラーリ328も勧めたい。このまえすっごくいい出物があったんだけど、オレは買えなかったから、代わりに買ってほしい。80年代のフェラーリはサイズもコンパクトだし、もう数が残ってないから値段も落ちない。タルガトップのGTSなんてちょっと品もあって、ドクターにオススメですよ。

“大人の秘密基地”として横須賀に構える「BACK DROP GARAGE」にはテリーさんが愛するクルマが並ぶ。奥からVWビートルカブリオレ、フェアレディSRL311、モーガン、スズキ・アルトワークス。

クルマ、プラスアルファが必要だ

オレたちはヘンテコリンなことを考えるのが仕事だけど、お医者さんは忙しいし、ちゃんと仕事するというのが前提じゃない。だからクルマ選びもマジメになるのは当然だよね。だけど最近、とくに日本車は「室内が広くて快適なクルマ」ばっかりでちょっとつまんないとは思うね。だって若者まで「いつかはアルファード」なんだから。

日本人って賢くなりすぎて、軽自動車かミニバンしか買わなくなったでしょ。スポーツカーなんて見向きもしない。それに比べると韓国や中国のクルマはまだ「カッコいいのが正義」っていう価値観が残っている気がする。それとヨーロッパの小さいクルマ、ルノーやプジョーやフィアットなんかはまだ“遊び心”があるね。

まあ、広くて便利なミニバンが売れるのもわかるよ。だって昔は、プレリュードやシルビアに乗れば「モテる」って時代があったんだよ。でも今は違う。クルマだけカッコよくてもダメ。「このクルマでどこに連れてってくれるの?」、「どんな楽しみを一緒に味わえるの?」って、結局そこなんだよ。フェラーリやランボに乗ってればモテるってわけじゃないし、逆に軽のミニバンでも使いこなしてたらカッコいい。オレだって、軽バンに荷物や道具を満載して、海辺でキャンプとかしている人を見ると「いいなぁー」って思うもん。
究極を言えば、自分の好きなものに乗ればいい。そこに自分のライフスタイルをプラスできたらカッコいいんだよ。今だったら、ジムニー・ノマドなんかまさに日常を遊びに変える相棒になりそうだよね。個人的にはシトロエンとかフランス車が気になるかな。フランス車ってどこか変わってて、遊び心があるんだよね。

友達に英国のオープンカー、モーガンを35年も乗り続けているやつがいるんだけど、あれはすごいね。今どきの装甲車みたいなクルマに比べたら、モーガンなんて丸裸みたいなもん。あれに乗ったら自分をさらけ出すしかないし、人間力が試されるよ。歳を重ねたら、そういうクルマがいいんじゃない?

別に「人生最後の一台」なんて決めなくていいし、そのとき「面白そう」と思ったクルマに乗ればいい。“人生いちどは”なんて面倒なこと言わないで、なんでも乗ってみればいいんだよ。
(インタビュー・河西啓介/本誌)

TERRY ITO
1949年生まれ。テレビプロデューサー、演出家。『元気が出るテレビ!!』『ねるとん紅鯨団』など時代を象徴する番組を多数企画。独自の発想と歯に衣着せぬ語り口で知られ、無類のクルマ好きとしても知られる。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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