
洋服を選ぶように、クルマもまた自分自身を表現するもの。イメージングディレクターとして、数々のブランドや人の魅力を引き出してきた髙橋みどりさんは、これまでさまざまなクルマを愛し、乗り継いできた。彼女にとってクルマとは何か。その選び方、楽しみ方について伺った。
文・岡 小百合 写真・安井宏充
ランチアが似合うんじゃない?と言われて
待ち合わせたカフェのドアを髙橋みどりさんが開けた瞬間、あたりの空気が揺れた気がした。しなやかに。お洒落に。白いトップスに黒のパンツという、誰もが持っているワードローブ。けれども、頭に載せたサングラスから、つま先を彩るバイカラーのバックストラップサンダルまで、すべての要素の組み合わせが、彼女そのものであるのだと思い至る。
さりげなく、かつ、上質。真似できそう。だが、そうはいかない。そして愛車のポルシェ911タルガもまた、紛れもなく髙橋さんという存在の一部だ。
「降り立った時に、自分のスタイルと合っているクルマを選びたいんです。クルマと自分が、いい感じでコンビネーションできるといいなと思っているので。降りた時にすんなりと自分でいられると言うか、気持ちよく歩き出せると言うか。たぶん、誰も見てはいないんですけどね(笑)」
ジュン アシダ、メルローズ、ジョルジオアルマーニ、バーニーズ ニューヨーク、エストネーション。数々のファッションブランドやセレクトショップに携わってきた髙橋さんは、日本人のファッションにおいて「大人の素敵」を切り拓いた一人と言っても過言ではないだろう。そういう歩みを思えば、いかにも髙橋さんらしいクルマとの向き合い方。しかし実は、クルマに関しては遅咲きだったという。
自動車免許を取ったのは28歳。友人との縁で買ったいすず・ジェミニを皮切りに、マツダRX-7、フォード・マスタングのハンドルも握った。その後、欧州車に目が向くようになったのは、『NAVI』『ENGINE』など自動車専門誌を率いてきた編集者・鈴木正文さんの存在があったと言う。
「スズキさんに“ランチアなんて似合うんじゃない? ”と言われて、クロのランチア・テーマを買ったんです」。
その後、10年の付き合いになったジャガーXJも、最初に勧めてくれたのは鈴木さんだったという。「黒ボディに黒の内装、ホイールがゴールドの限定車でした。『ジャガーくん』と呼び名もつけていたほど気に入っていました」

自分仕様のポルシェを楽しんでいます
その後、ポルシェ・ケイマン、ガラスルーフの911を経て、現在は冒頭のタルガと過ごして3年になるという。ブラックのボディと、クラシックな趣のある千鳥格子のような白黒のシートの組み合わせが印象的だ。
「今回は白と黒とシルバーだけで作ろうと思ったんです。ホイールも全部」
色の選び方、そしてクルマ歴も、硬派でどちらかといえば男性的とさえ感じられる。少なくとも女性らしいとは言い難い。「運転が難しそうなクルマばかり選ぶよねって、よく言われるんです。私はそんなこと感じないんですけどね……。運転、楽しいなって」と無邪気に微笑む。
「男性は、機能や性能やスペックを重視してクルマを選ぶ人が多いかもしれないけれど、女性は、少なくとも私は、自分が気持ちよく、行きたい所へ行きたい時に行けるクルマであってほしい。ファッションも、なりたい自分になるために、好きなものを着たり買ったりするわけですから、クルマ選びと共通するところがあるんじゃないかなと思っています。自分らしいものに囲まれているほうが、気持ちいいし楽しいでしょう?」
それはまさに、ここ10年ほどポルシェに“ハマっている”理由でもあるという。「ポルシェはボディとインテリアのカラーだけじゃなく、シートのステッチやステアリングの太さなども、自由に選んで組み合わせられるんです。選びまくって自分仕様のポルシェを楽しんでいます」
細かい点まで妥協せず、自分の「好き」と「らしさ」を追い求めているからこそ生き方そのものでもあるかもしれない。
「年齢を重ねると、『こんなものかな』『まあいいや、こんな感じで』と思うことが増えますよね。でもじつは、年齢と共にできるようになることが増えるし、あきらめずにやってみたほうが楽しいんじゃないか、と私は思っているんです」




Midori Takahashi
株式会社Oens代表。数々のファッションブランドを経て、「バーニーズ」や「エストネーション」などセレクトショップの立ち上げに携わり、現在はイメージングディレクターとして、人やモノの魅力を引き出すスタイルを提案し続けている。












