「Talk in the car.」Talk.01 Stellantisジャパン代表取締役社長 成田 仁

自動車ブランドのキーマンにお話を伺う新企画「Talk in the car.」。
第1回は、アバルト、アルファロメオ、シトロエン、DSオートモビル、フィアット、フィアット プロフェッショナル、ジープ、プジョーといった、世界各国の自動車ブランドを有する「ステランティス」の日本法人代表、成田 仁さん。
ジープ・ラングラーを走らせながら、成田さん自身のカーライフについて伺った。ではさっそくTalk in the car!
まとめ・夢野忠則 写真・三浦孝明

scene.1 :出会い

多彩な欧州車が並ぶStellantisジャパン本社のパーキングエリアで、いかにもアメリカンなジープ・ラングラーが、圧倒的な存在感とともにオーラを放っていた。無骨なイメージを覆す、最新のラングラーの洗練された快適な乗り心地に驚きながら、ショートドライブが始まった……。

─相当なクルマ好きと伺っていましたので、今回ラングラーを選ばれたのは少し意外でした。なんとなく、アルファロメオ・ジュリアあたりを想像していたので。

「もちろんアルファロメオも大好きで、ジュリアにも乗っています。でも、実は私がクルマ好きになったきっかけはSUVだったんです。当時はRVと呼んでいましたけどね。だから、私自身のカーライフについてお話しするなら、ラングラーがふさわしいだろうと思いまして」

─クルマ好きとしての第一歩がSUVだったんですね。どのようなきっかけだったのでしょうか。

「子どもの頃、キャンプ好きだった父がワンボックス車にキャンプ道具一式を積み込んで、休日のたびにいろいろなところへ連れて行ってくれましてね。それが、私にとってのクルマの原体験なんです。その後、父がワンボックス車を日産テラノに買い替えたのですが、そのテラノがすごくカッコよくて。それから本格的にクルマへ興味を持つようになりました」

─当時は、パジェロやハイラックス・サーフといった4WD車が若者にも人気でした。

そうです、そうです。なかでも私が憧れたのは、本格クロカンのジープやジムニーでした。父の影響で、キャンプも好きでしたからね。それから巡り巡って、今こうしてジープ・ブランドを取り扱う会社の代表を務めさせていただいていることには、やはり感慨深いものがあります」

─今日は天気もよくて、バイクもたくさん走っています。成田さんもバイクに乗られるそうですね。

「バイクに乗るようになったきっかけも、やはりキャンプ旅です。SUVには憧れていましたが、まだクルマを所有するほどの余裕はありませんでしたから、大学に入って250ccのバイクを手に入れ、キャンプ道具を積んで北海道から九州まで、合わせて3万キロを走破しました。友人は誰も付き合ってくれなかったので、いつもソロツーで(笑)。それ以来、ずっと乗り続けています。若い頃にSUVやバイクと出会ったことで、その後の私の人生の方向性が決まったように思いますね」

scene.2 :相棒

幼い頃、父が乗るSUVによって目覚め、次第に高じていったクルマへの思い。その後、社会人となった成田さんは、どんなクルマと、どんなカーライフを駆けてこられたのか。さまざまなクルマが行き交う都心を走り抜けながら振り返れば、そこにはいつも、愛すべき相棒の存在があった……。

─これまで、どんなクルマに乗ってこられたのですか?

「国産自動車メーカーに就職して、初めてのマイカーとして購入したのが、中古のスズキ・エスクードでした。ついに憧れだったSUVを手に入れたわけです。街乗りジムニーのような、ショートボディのMT車で楽しいクルマでしたね。次に手に入れたのが、新車のプジョー306XSi、5速MTです。その頃はラリーが好きで、パリダカを走るプジョー205に憧れていましたから、プジョーに乗ってみたいと思って。ピニンファリーナによるデザインは美しいし、足まわりもよく、走りも素直ないいクルマでした」

─その後、まさかプジョーを扱う会社に入るとは知る由もなく……。

「もちろんです(笑)。で、その後子供が生まれたこともあって、ハッチバックからブレークに乗り替え、結局プジョー306には7年以上乗りました。306で、ドライビングの基礎を学べたような気がします。思い出深いクルマですね」

─MTのプジョーに7年以上も乗り続けられたとは、ほんとクルマ好きですね。その後、国産自動車メーカーからBMWに転職されたと伺いました。では愛車もBMWに?

「いえ、プジョー306の次はVWトゥーランです。子どもが大きくなり、父がそうだったように、私も家族とキャンプへ出かけるようになって、たくさんの荷物を積める実用的なクルマがいいということで。会社では“なんでBMWじゃないんだ”と言われましたけどね(笑)。その頃はまだ若かったですし、カジュアルなクルマに乗っていたかったんです」

─わたしでもそう言うと思います(笑)。

「トゥーランのルーフキャリアに自転車やカヌーを積んで、家族でいろいろなところへ出かけました。子どもたちにとってのクルマの原体験も、きっと幼い頃の私と同じようなものだったと思います」

─で、その後、BMWからアウディへ移られて……。

「縁あって、BMWからアウディへ、ディーラー開発部門のマネージャーとして移りました。家族用のクルマとしてはトゥーランがありましたから、私はアウディのA5やS5といった2ドアクーペで、通勤ドライブを楽しんでいました。わざわざ遠回りをしたりして(笑)。アウディで、初めてジャーマンプレミアムカーの魅力を実感しましたね。結果的に、SUVからスポーティなクルマまで、また大衆車からプレミアムカーまで、さまざまなクルマを自分で運転し、それぞれの魅力を幅広く味わってきました。その経験が、今の仕事にも活かされていると思います」

─現在のプライベートのカーライフはいかがですか。お子さんも成長されて、もうキャンプ旅は卒業でしょうか?

「“キャンプ旅”というテーマは変わらず、むしろさらに深まりましたね。こうしてラングラーを走らせていると、このまま旅に出たくなってウズウズします(笑)。じつは今はキャンピングトレーラーを牽引して、全国各地を回っています。子どもの成長に合わせてトレーラーもだんだん大きくなり、現在のトレーラーが3台目(!)。もちろん、牽引免許も取得しましたよ。キャンプのたびに、いちいち荷物を積み込まなくてもいいので、とても快適です。バイクにもずっと乗っていて、休日には目的地を決めず、ふらりと走り出すこともあります。えぇ、学生の頃と同じで、今もいつもソロツーです(笑)。クルマもバイクも、私のライフスタイルには欠かせない相棒ですね」

scene.3:夢

海沿いのパーキングには、家族連れや若者たちが乗ってきた、多種多様なクルマが並んでいる。それぞれのスタイルに寄り添い、より豊かで楽しいカーライフを叶えるクルマを届けたい─。そう語る成田さんの夢の向こうで、ラングラーが青空を背景に微笑んでいるように見えた……。

─昨年、Stellantisジャパンの代表取締役社長に就任されました。現在の率直な思いをお聞かせください。

「これまで自分が積み重ねてきたキャリアの集大成として、とてもやりがいのある仕事だと思っています。さらにクルマ好きの私としては、このジープはもちろん、最初に自分が夢中になったプジョーをはじめ、世界各国の個性的で魅力あふれるクルマたちに囲まれて仕事ができることを、とても幸せに感じています」

─Stellantisジャパンでは、フランス、イタリア、アメリカ、8つの自動車ブランドを取り扱っていらっしゃいます。マルチブランドならではの難しさもあるのではないでしょうか。

「複数のブランドを同時に展開する、ビジネス上の難しさは確かにあります。それぞれのブランドで、成り立ちや文化も異なりますからね。しかし一方で、さまざまな個性を持つブランドのクルマが揃っているからこそ、多様化するお客様の価値観やライフスタイルに対応することができます。そういう意味では、マルチブランド展開ならではの大きな可能性やチャンスがあると思っています」

─なるほど、マルチブランドだからこその強みですね。同時に「ステランティス」自体のブランディングも推し進めていらっしゃいます。マルチブランドならではの難しさもあるのではないでしょうか。

「そうですね。ステランティスは、お客様がご自身のライフスタイルを表現できる“ステートメントブランド”であり続けたいと考えています。単なるモビリティやステイタスシンボルとしてのクルマではなく、お客様がご自身のカーライフの相棒となるような一台と出会い、選んでいただけるブランドでありたい、と。現在は物価高や為替の問題など厳しい状況もありますが、だからこそクルマを選ぶことのワクワク感が広がるような、楽しいブランドであることを発信していきたいと思っています」

─では最後に社長として(笑)、これからのStellantisジャパンの展開についてお聞かせください。

「今年、東京都足立区に新たなショールームを開設しました。そこには、ジープ、プジョー、シトロエン、フィアット、アバルトという、5ブランドのクルマが並んでいます。コンセプトは“Stellantis Brand House”。まさにマルチブランドならではの魅力や楽しさが詰まったショールームです。クルマ好きなら、きっと半日いても飽きないと思いますよ(笑)。今後は、こうしたマルチブランドのショールームを展開していきたいと考えています。例えば、ジープとプジョーのように、それぞれ異なる嗜好を持ったお客様が、同じショールームを訪れる。お客様がそれぞれのライフスタイルにマッチするクルマと、ひとつの場所で出会うことができる。もちろん、クルマ好きにとっても、まさに夢のオモチャ箱のような場所になると思います」

─好きなクルマと出会い、クルマを人生の相棒として歩んでこられた成田さんならではの展望ですね。クルマ好きがつくる、クルマ好きのための“オモチャ箱”のようなショールーム。ぜひ伺ってみたいですね。

Jin Narita
1973年神奈川県生まれ。国産自動車メーカーにてキャリアをスタートし、輸入四輪、二輪車ブランドでディーラー開発などに従事する。2025年1月より現職。趣味は旅、キャンプ、バイクツーリング。

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