Doctor’s Garage Life 〜ガレージのある風景〜 乗ってみたいクルマ、ガレージに収めたいクルマが、まだまだあるんです。

生来のクルマ好きで、小学生のときに将来は自動車整備士になると決めていた。やがてその道はあきらめて歯科医となったものの、クルマへの興味は増すばかり。レースや本場のミッレミリア参戦を経て古希を迎えた今、ガレージで見る夢は……。
文・沼田 亨 写真・奥村純一

1.ガレージの壁に飾られた、ミッレミリア参戦の記憶。 2.ガレージドアの内側には、大きく引き伸ばされた往年のミッレミリアの写真が貼られている。 3.山下保彦さん。「遊んでばかりと思われるかもしれませんが、本業では長年歯内療法の研究に携わり、日本歯内療法学会の中部支部会長を務めているんですよ」とのこと。 4.レースやクラシックカーイベントで獲得したトロフィーなど。 5.同じ敷地内にあるサブガレージ。バーキンセブンとミニセブン(原付四輪)の「親子セブン」、ドゥカティ・モンスター、カワサキ・ゼファー750、同250TRなどの二輪が収められている。

100台は乗り継いだ

以前は船舶(釣り)やゴルフなども楽しんだが、趣味に割ける時間には自ずと限りがある。だったら優先するのはやはりクルマだと語るのは、愛知県西尾市で歯科医院を開いておよそ40年という山下保彦さん。自宅や医院と同じ敷地内に15年ほど前に建てたというロフト付きのガレージには、パナールの空冷フラットツインユニットを流用したフレンチスポーツのDBHBR バルケッタ・アンテム、フェラーリ308GTS、ポルシェ718スパイダー、アバルト695が収まっている。

このほかにも点在するガレージやショップに預けてあるクルマを合わせると所有台数は10台を超える。とはいえ山下さん自身にコレクター指向はない。目下のラインナップは、これまでに手に入れたクルマのなかから、気に入ったものを残しているだけなのだ。

「今年で70歳になりますが、まだまだ乗ってみたいと思うクルマが尽きません。それも試乗させてもらうとか借りるのではダメ。購入してガレージに収め、ちゃんと乗ってみないと気が済まないんですよ(笑)」

数えたことはないが、これまでに乗り継いだクルマは100台は下らないのではないかという。ハイパフォーマンスモデルに限っても、通称ハコスカのセダンGT-Rに始まり、2代目シボレー・カマロに同コルベットC3、フェラーリは348TBが2台にF40、ポルシェは930ターボ、996と997の911GT3、ランボルギーニはミウラ、カウンタックLP400S、同アニバーサリーといった具合。それこそ車名を挙げていくだけで紙幅が尽きてしまいそうなのだ。

上/4柱リフトを備えたガレージ。10年ほど乗っているというフェラーリ308GTSの前オーナーは駐日フランス大使で、イエローのフォグランプを備えたフランス仕様。フレンチブルーに塗られた1952年DB HBR バルケッタ・アンテムは、5年ほど前にやってきた。パナール製750ccの空冷フラットツインを積む。右/4台のクルマを入れ替えなしですぐに出せるよう、両面ドア仕様としたガレージ。左/バーカウンターまで設えたロフト。壁にはパリで活躍した自動車画家 吉田秀樹氏の作品が飾られている。

整備士になりたかった

やはり歯科医だったお祖父さんが、戦前型ダットサンから始まったモータリストだったこともあり、幼い頃からクルマやバイクは身近な存在だった。小学生のときからこっそりスーパーカブを乗り回し、将来は自動車整備士になろうと決めていたという山下さん。高校時代はバイクに熱中した。

「先輩から捨て値でお古がまわってくるんですよ。Z2やCB750にも乗りましたが、好きだったのは2ストのマッハⅢとヤマハDX250ですね」

家庭の事情から整備士への道は断念して歯科大に進学し、卒業後は勤務医となったものの、クルマ趣味はどんどんヒートアップ。AE86のワンメイク耐久レース入れ、独立して医院を開業した後には348でフェラーリ・チャレンジに参戦した。

こうしたレースや同時期に所有していたF40などを通じて絶対的な高性能を体験した後は、徐々にクラシックカーに興味が移っていった。そして2002年にマセラティA6G で本場イタリアの復活版ミッレミリアに参戦したのが決定打となり、以後オスカやエルミニ、ジャガーXK120などマシンを替えてミッレミリアには5回ほど出場。一時はイタリアにもクルマを置いてローカルイベントにも足を延ばし、日本でもクラシックイベントを楽しみつつ現在に至っている。

そんなクラシックイベントのメモラビリアが随所に飾られたガレージに仲間が集まれば、自然と話題はクルマのことになる。愛車の調子、イベント、そして欲しいクルマ。ちなみに最後のお題に対する山下さんの答えは、「戦前のロールス・ロイスかベントレー。何台か乗り比べてみたいですね」。古希を迎えて、ますます意気軒高な山下さんなのだった。

20年くらい前から所有しているというフィアット1100MMは、1948年のミッレミリアで、フェラーリ166MMに次ぐ総合2位、クラス優勝したヒストリーを持つ個体。フィアット1100のシャシーに空力的なボディを架装したワークスマシンである。国内のクラシックカーイベントにはこれで参加することが多く、左は豊川稲荷で開かれたコンクールデレガンス、右はクラシックカーラリーのコッパ・ディ・小海におけるショット。

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