
アルピーヌのスポーツカー「A110」が2026年6月をもって生産を終了する。それに先立ち、日本市場では受注終了の時期が明らかにされ、現在選べるA110は3つのモデルに集約された。「R70」、「GTS」、「アニバーサリー」──それぞれ異なる性格を与えられた最終仕様のA110に試乗した。
文・河西啓介(本誌)
日本での受注終了は2026年3月末
アルピーヌA110が2026年6月をもって生産を終える。日本においても2026年3月末で受注終了のスケジュールが示され、A110というスポーツカーは、いよいよ最終段階に入った。
現在、日本で新車として選べるA110は「R70」、「GTS」、「アニバーサリー」の3モデル。いずれもアルピーヌ創立70周年の節目にあわせてラインアップが整理されたもので、単なる仕様違いではなく、A110というクルマのキャラクターを異なる角度から切り取った存在だ。
3モデルすべてに共通するのは、軽量なアルミ製シャシーを核としたミッドシップ・レイアウトというA110の基本思想である。軽さを活かし、クルマの動きがドライバーの感覚と直結すること。この価値観は2018年の登場から終盤に至るまで、一貫して貫かれてきた。
その一方で、今回の3モデルは、シャシーの考え方やエンジン仕様、装備内容によって、明確にキャラクターが分けられている。
とくに大きな違いとなるのは、R70とGTSが「シャシースポール」を採用し、エンジンは最高出力300ps/最大トルク340Nmを発揮するのに対し、アニバーサリーはA110の基本といえる、しなやかな「アルピーヌシャシー」を採用し、エンジンも最高出力252ps/最大トルク320Nmに留めている点だ。
今回、長野県の車山高原のワインディングロードを舞台に、その3モデルに試乗する機会を得た。

A110 R70 ワインディング・スペシャルな究極モデル

A110 R70は、アルピーヌブランド創立70周年記念モデルであり、徹底的な軽量化による運動性能向上を目指したモデルだ。フロントボンネットやルーフ、リアフード、リアスポイラー、さらには18インチホイールに至るまでカーボンを採用し、車両重量は1090kgに抑えられている。
空気抵抗の低減とダウンフォースを両立するため、エアインテーク付きフロントボンネットや大型リアスポイラーなどのエアロパーツを纏い、ミシュランPS CUP 2のセミスリックタイヤ、アジャスタブルレーシングダンパー、ブレンボ製ブレーキキャリパーといった装備が標準で与えられる。

ドライバーはサベルト製フルバケットシートに乗り込み、6点式シートベルトで身体を締め上げなければならない。軽量化のためリアウインドウも取り払われ、カーボンパネルに置き換えられているため、“ほぼ後方視界ナシ”というスパルタンさだ(試乗車はオプションのデジタルインナーミラーを装備していた)。

走らせても、その硬派ぶりは貫かれている。足まわりは硬く締め上げられ、不整路では容赦なく突き上げられる。しかしワインディングロードを走らせると、一転してこの硬さが長所になる。ステアリングを切った瞬間にノーズがスパッと向きを変え、荷重移動の変化も非常につかみやすい。
R70の「R」は“ラディカル”を表すそうだが、A110としてのひとつの究極を手に入れたいという人なら、スタンダードモデルの約2倍となる価格(1790万円)を支払う価値はあるだろう。
A110 GTS スポーツと快適性の両立を目指す

A110 GTSは、従来のA110 SとA110 GTの役割を統合する形で誕生したモデルだ。シャシーはR70と同じく硬派なシャシースポールをベースとしながら、快適性や使い勝手にも配慮されている。
エンジンは300ps仕様で、パフォーマンスはR70と同等。いっぽうタイヤはミシュランPS4を標準装着し、過度に尖らせないバランスが与えられている。インテリアにはリクライニング機構とシートヒーターを備えるサベルト製スポーツシートを採用し、長距離移動にも無理がない。
GTSはR70ほど過激ではなく、ワインディングではピュアスポーツカーらしい硬派な走りを楽しめ、日常でも不満なく使えるバランスの取れたモデルだ。一台で硬軟の両立を求めるオーナーの望みに応える選択と言えるだろう。

A110 アニバーサリー 原点に立ち返ったベーシックなA110

「アニバーサリー」という名称から特別装備を想像しがちだが、今回の3モデルの中ではもっともベーシックな仕様だ。しなやかなアルピーヌシャシーを採用し、ある意味、A110というクルマの成り立ちや思想をもっとも率直に味わえるモデルといえる。
エンジンは最高出力252ps。数値はR70やGTSより控えめだが、そのぶん扱いやすさとバランスのよさが際立つ。ワインディングロードでは、A110が本来持っている俊敏さとリズム感が心地よく感じられる。今回試乗して、もっとも「楽しい」と思えたのはこのアニバーサリーだった。 装備もシンプルでありながら必要にして充分。ピュア・スポーツカーのコクピットとして好ましく思えるものだ。

スポーツカー・ファンへのカウントダウン

今回、A110が生産終了となるのは販売不振からではない。ますます厳しさを増すガソリンエンジンへの規制対応が、その理由だ。ブランドそのものが消滅するわけではなく、アルピーヌは今後、電動化されたパワートレーンへと舵を切っていく。
とはいえ、A110の生産終了が、初代「A110」へのオマージュから復活したアルピーヌ・ブランドの、ひとつの区切りとなることは確かだろう。また今後、A110のような内燃機関を搭載した軽量ミッドシップ・スポーツカーを手に入れられる機会が、確実に失われていくのも間違いない。
さる11月27日、A110の日本オリジナル最終限定車「BLUE ALPINE EDITION」の受注開始が発表された。アルピーヌ・ブランドを象徴するブルーのボディを纏った日本オリジナルの限定車だ。A110(999万円)が30台、A110GTS(1200万円)が30台、A110 R70が10台(1850万円)の計70台が販売される。
このA110のファイナル・カウントダウンに、アルピーヌ・ファンだけでなく、クルマ好き、スポーツカー好きなら、少なからず胸がざわつくに違いない。1960年代のラリーで無敵の活躍を見せた名車「アルピーヌA110」の名を受け継ぐモデルを手に入れる、最後のチャンスなのだから。




現行アルピーヌA110の日本オリジナル最終限定車として発表された「BLUE ALPINE EDITION」。左からA110(30台限定/999万円)、A110 GTS(30台限定/1200万円)、A110 R70(10台限定/1850万円)。限定台数に達し次第、販売終了となる。
アルピーヌ・ジャポン オフィシャルサイト https://www.alpinecars.jp/
アルピーヌ コール 0800-1238-110(受付時間9:00〜18:00 年中無休)














