操る歓びを、日常に。

ライトウェイトスポーツカーの代名詞といえるロータスの新世代モデル、エミーラ。ミッドシップレイアウトされたV6エンジンに6速MTを組み合わせるスポーツカーは、日常の中に“操る歓び”を取り戻してくれるのか。
文・写真/河西啓介
ピュアスポーツから、ラグジュアリーGTへ
英国に生まれ、モータースポーツを通じて技術を磨き、F1でも数々の革新と勝利を重ねてきた「ロータス」は、クルマ好きにとっては、特別な響きを持つブランドだ。
僕自身、1.8リッター直列4気筒エンジンを積むエリーゼに、1年ほど乗っていたことがある。まるで自分がクルマの一部になったかのような一体感が得られる、乗るたび「楽しい!」と思わせてくれるクルマだった。
今回走らせたエミーラは、エリーゼの面影は残しながらも、明らかに立ち位置が違っていた。全幅は約1.9m、車重は1.4tを超える。もはや「ライトウェイトスポーツ」ではなく、ミドルサイズスポーツカー、あるいはグランツーリスモというべきカテゴリーのモデルだ。
その変化は、ロータスがラグジュアリーなスポーツカーブランドへ歩み始めたことの表れでもある。低くワイドなボディにはグラマラスな曲面が与えられ、街に置けば高級スポーツカーに見劣りしない存在感がある。室内も上質に仕立てられ、12ウェイ電動シートやデジタルメーター、KEFオーディオなどを備える。走りのためにガマンをすることは求めない、GTとしての快適性と華やかさを身に着けている。


空力性能を追求したフロントまわりと、ワイド感を強調するリアビュー。コンパクトだったエリーゼとは異なる、堂々とした佇まいを見せる。


デジタルメーターやセンターディスプレイを備えた現代的なコックピット。質感と快適性は大きく高められた。オーディオは英国のブランド「KEF」によるプレミアムサウンドシステムを標準装備。
受け継がれた、ロータスらしさ
試乗車は、3.5リッターV6スーパーチャージャーに6速MTを組み合わせた「V6 FIRST EDITION」。最高出力405ps、最大トルク420Nmという数字以上に魅力的なのは、操作に対する反応の濃さだった。
カチ、カチッと節度を伴って決まるシフト。機構の一部を覗かせるギアチェンジメカニズムも、MT好きの気持ちをくすぐる。アクセルを踏みこめば、右足とリアタイヤが直結したように背後から車体を押し出し、ブレーキは踏んだ分だけ確実な制動力を提供する。
ハンドルを切ると、ドライバーを中心にクルマが回っていくような感覚、背後で響くV6の鼓動は、ミッドシップならではのものだ。停車後、ガラス越しにエンジンを眺める時間も含め、走らせる楽しさだけでなく、所有する悦びも大きい。 クラッチは予想より軽く、サイドシルもエリーゼやエキシージほど高くない。乗り降りのたびに身構える必要はなく、街乗りにもロングドライブにも現実的に付き合える。シート後方とエンジン後部には荷物を置く空間もあり、二人での小旅行にも対応できそうだ。


ミッドシップマウントされる3.5リッターV6スーパーチャージャー。最高出力405ps、最大トルク420Nmを発揮する。6速MTはシフト機構の一部をあえて見せ、クルマ好きの心をくすぐる。


シート後方にはバッグなどを置けるスペースを確保。日常使いへの配慮も行き届く。エンジン後方に151リッターのラゲッジスペースを備える。二人分の小旅行の荷物なら十分に収められそうだ。
日常で味わう、操る歓び
ドライブモードで「Tour」を選べば、スロットルレスポンスや排気音が穏やかになり、クルマ全体の動きが落ち着いて感じられる。いっぽう「Sport」に切り替えると、エンジンの反応やサウンドが鮮明になり、一段ソリッドな一体感が生まれる。Sportでも決して乗り心地が「硬すぎる」とは感じられなかった。個人的にはSportモードをデフォルトで選びたいと思った。
アクセルとブレーキの配置も絶妙で、ヒール・アンド・トーが自然に決まる。いまどき公道でそんな“技”を使おうとは普段考えないのに、エミーラに乗ると、ブレーキングしながらアクセルを煽り、回転を合わせてシフトダウンしたくなる。
この「FIRST EDITION」は初期導入モデルであると同時に、快適装備や豪華装備を盛り込んだ、いわば“全部入り”仕様だ。取材時点で案内された価格は1573万円で、絶対額は小さくないが、多額のオプション追加を前提とする同クラスの欧州スポーツカーに比べ、そのまま走り出せる金額と考えれば納得感は高い。
わずかな舵角にも即座に反応するハンドリング、右足に呼応するエンジン、ドライバーと車体の一体感を生むミッドシップ・レイアウト。ピュアスポーツからラグジュアリーなGTへとキャラクターは変えても、運転する楽しさ紛れもなく「ロータス」のものだったことに安堵した。操る歓びを日常的に味わえる、いわば「大人に相応しいロータス」。それがエミーラの魅力だ。


サイドシルはエリーゼやエキシージより低く、乗り降りしやすくなった。アルカンターラとレザーを組み合わせたスポーツシートは電動調整機構とシートヒーターも備える。


10.25インチのタッチスクリーンを採用。Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応する。

LOTUS EMIRA V6 FIRST EDITION
ボディサイズ 全長4413mm×全幅1895mm×全高1226mm
ホイールベース 2575mm 車両重量 1458kg
エンジン 3456cc V型6気筒+スーパーチャージャー
最高出力 405ps/6800rpm 最大トルク 42.8kgm/2700-6700rpm
トランスミッション 6速MT
タイヤサイズ F:245/35 R20 R:295/30 R20
価格 1573万円(税込)














